研究概要 |
新生ラット脳の皮質,線条体,黒質,縫線核,前角及び知覚神経節から細胞を取り出し、ラミニン及び合成ペプチドの細胞接着・神経突起伸展活性を調べた。ラット血清の存在下で差異がみられたのは知覚神経節細胞のみで,ラミニン,ペプチドPA22ー2に対して細胞はポリリジンや非コ-テイング培養皿に比べて接着と神経突起伸展が強くみられた。無血清培養液での脳神経細胞の初代培養は条件が難しく,現在もラミニンとペプチドの細胞接着と神経突起伸展活性について検討中である。 PC12細胞に対する神経突起伸展活性をラミニンA鎖のペプチドPA22ー2は示し、その活性中心はIKVAV(IleーLysーValーAlaーVal)である。この配列の上流にIKLLI(IleーLysーLeuーLeuーIle)の配列を含むペプチドPA57にもPA22ー2と同様の細胞接着・伸展・移動,神経突起伸展の活性があり,しかも両ペプチドには神経細胞増殖,ヘパリン結合作用のあることもわかった。この両ペプチドのN末端にシスチンを付けたペプチドを合成し、生物活性とコ-テイング率を比較したところ、シスチンがなければコ-テイング率が極めて悪くなるが、IKVAVはシスチンの有無にかかわらず細胞接着と神経突起伸展活性を示した。しかし、IKLLIはシスチンがなければ細胞接着活性を持たず、神経突起伸展活性のみを示した。 ラミニンは基底膜の主要成分で固体因子として最初にラミニンと細胞が接着し、その後細胞生理活性が示されと考えられるが、ラミニンの一部の配列であるIKLLIには液性因子として神経突起伸展に対し活性を示す可能性がある。現在はこの配列の修飾ペプチドを合成し神経突起伸展活性の液性因子の基本分子構造を検討中である。
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