研究概要 |
研究期間である3年間で申請者は10例のSADの症例の治療にあたることができた。本研究のプログラムにほぼ完全に条件を満たして光療法が実施できた症例はわずかであったが,下記のような注目すべき特徴が得られた。 1.SADに見られた生物学的特徴と光療法の影響 1)遊離トリプトファンが健常者に比して約5%以下と有意に低下していた。光パルス療法により臨床症状の改善ととも10%と有意に増加した。 2)メラトニンの日内リズムには異常は認められなかったが,分泌量は低下傾向にあった。 3)コルチゾールは全時間で増加傾向にあり,プロラクチンは減少傾向を示した。光療法によってメラトニン,プロラクチン,コルチゾールの分泌位相は2から3時間前進した。 4)体温リズムも約4時間前進したが,必らずしも前進させることが,光パルス療法の作用機序の中心であるとは言いきれない。 2.性腺機能に及ぼす影響 SADは本来女性に多く月経前緊張症を呈している症例が多い事が特徴とされている。日本ではあまり注目されていないが光照射は,排卵および黄体機能に対して抑制的に働いている可能性が示された。そのためこのような症例には光照射開始を卵胞期にすると効果的であり,またSAD以外の月経関連症候群にも有効である可能性が認められた。 3.SADと遺伝歴について SADの家族内発症を調査したところ,10例中3組が親子例であり,その遺伝的素因の強さをうかがわせている。今後この観点からの研究も望まれる。
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