研究概要 |
平成2,3年度には,膀胱,直腸の自律神経支配をHRP法で検討し以下のことが示された。膀胱の求心性支配は,下腹神経を主な神経経路とする腰髄後根神経節からの支配と骨盤内臓神経を経路とする仙髄後根神経節からの支配に大別できた。両者の比率は標識細胞数で比較すると1:4で後者が優勢であった。これらの支配は両側性であるが,骨盤内臓神経を経路とするものは骨盤神経叢を通過後始めて対側に分布する。また,膀胱に分布する求心神経の起始細胞は仙髄より腰髄の方が小型であった。膀胱の交感神経支配は,下腹神経主な経路とする第6腰部幹神経節より吻側の幹神経節からの支配(上位群)と骨盤内臓神経を主な経路とする第7幹神経節より尾側からの支配(下位群)に大別できた。両者の比率は1:3で下位群が優勢であった。この事より,従来仙髄副交感神経の経路とされていた骨盤内臓神経が,幹神経節からの交感神経支配の経路としても重要であることが判明した。また,上位群は,右側が優勢で,下腸間膜動脈神経節を通過しないものも存在した。下部直腸の求心性支配は両側の第2腰髄から第2尾髄の後根神経節より支配をうけ,主な支配は第1,2,3,仙髄と第1尾髄の高さである。神経経路として下腹神経,骨盤内臓神経が重要であるが,陰部神経などの体性神経も関与していることが強く示唆された。下部直腸の交感神経支配は第2腰部から第4尾部の幹神経節より両側性に支配を受け,とくに第7腰部から第1,2尾部の幹神経節からの支配が多い。肛門周囲皮膚の求心性支配は両側性に仙髄と尾髄の後根神経節より支配を受けるが,腰髄後根神経節からの内臓神経性求心性支配が存在する(経路は下腹神経)。平成3,4年度には主として切断された骨盤内臓神経の再生につき検討し,自律神経の再生が盛んであることが示された。また,神経移植も自律神経再生にとって有効であることが判明した。
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