研究概要 |
既にわれわれは雑種成犬を用いて,中肝動脈および上腸間膜静脈を虚血ー再潅流させることにより急性無石胆嚢炎を作成することに成功しており,このモデルを用いて,虚血および再潅流時間をそれぞれ一定として,虚血ならびに再潅流による胆嚢粘膜障害の程度を経時的に肉眼的および組織学的に検索するとともに,生化学的に検索した.これによると45分虚血以上かつ90分以上再潅流を行った群では胆嚢炎は全例に発生し,肉眼的炎症面積は虚血時間の延長により増大し,組織学的な炎症の深度は再潅流時間の延長により進行した.また胆嚢粘膜中の生化学では,再潅流時間を90分と一定にすると,虚血時間の延長に伴いPLA_2活性,過酸化脂質量は漸増し,虚血時間を45分と一定にすると,再潅流時間の延長(24時間まで)に伴いPLA_2活性,過酸化脂質量,SODが漸増した.さらに虚血45分ー再潅流90分の実験モデルを用いて再潅流時間中に,胆嚢動脈内にSOD+CATを持続注入することにより,炎症面積は対照群に比し45%軽減され,胆嚢粘膜中のPLA_2活性,過酸化脂質量も軽減した.またプロスタグランディンの役割をみると,胆嚢内に漏出してくるPGE_2,PGF_2α,6KF,TXB_2は虚血ー再潅流することにより上昇し,特にPGE_2は胆嚢の炎症面積と正の相関が認められた.さらに虚血45分ー再潅流90分の実験モデルを用いて再潅流時間中に,胆嚢動脈内にSOD+CAT+キナクリンを持続注入すると,炎症面積は対照群に比し50%軽減し,胆嚢内に漏出してくる6KF,TXB_2変動は認められなかったが,PGE_2とPGF_2αは著明に低下した. また本実験の派生結果として,1時間虚血後再潅流を行うと,コレステロ-ジスが高率に発生し,虚血ー再潅流を繰り返すことにより,その発生頻度はさらに高率となった.生化学的にみても虚血ー再潅流により,胆嚢内胆汁のpHは低下し,胆汁酸やレシチン濃度が低下し,コレステロ-ル飽和指数は上昇していた.
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