研究概要 |
(基礎的検討)呑竜ラットに同種腫瘍細胞AH130を1x106個門脈から移植し,2日後からrIL-2(50.000 U day)を門脈内に持続投与(P群),あるいは皮下組織内に持続投与した(S群),対照群には生理食塩水を門脈内に投与した(C群),3群を作成した,移植後8日目に,肝転移巣の状況を評価し,血液中単核球(BMC),脾細胞(SC)および肝非実質細胞(fraction 1:比重1.035-1.070,fraction 2:比重1.070-1.090)の細胞傷害活性を標的細胞としてYAC-1,EL-4,AH130を使用して,51Cr放出試験により測定した,P群においては,肝転移巣は有意に小さく,fraction 1のNK,LAKおよび抗AH130活性はC群に比較して有意に増強されていた。しかしS群においてはこのような治療効果は誘導されなかった。 さらに,ICRマウスを使用し,脾細胞およびリンパ節リンパ球よりLAK細胞を誘導したところ,IL-2.600U mlの添加培養により,培養後7日目に約70%のLAK活性を有するLAK細胞が誘導できた。 (臨床研究)大腸癌23例を対象に,術中,大腸癌主病巣領域の門脈血を採取し,同血液のprostagiandin E2(PGE2)濃度およびリンパ球サブセットを測定した。その結果,切除後肝再発例の門脈血中PGE2は明らかに高値を呈した。従って,門脈血内PGE2濃度は,大腸癌術後肝再発の有用な指標になることが判明した。さらに,大腸癌肝転移に対し肝切除後にIL2を中心とした肝動注多剤免疫療法(IL 2,OK 482,adriamycin,cyclophosphamide,famotidineの5者併用)を施行した。その結果,最長3年4カ月の生存例を含め,全例生存中であり,肝再発防止に有用であると考えられた。 以上の,基礎的並びに臨床的研究により,IL-2を中心とした免疫療法は,大腸癌術後の肝再発予防に効果的であり,肝再発のrisk factorとして門脈血内PGE2濃度を測定することが有用であると考えられた。
|