研究概要 |
リポソ-ムは血中での安定性が低いために天然に存在する多糖であるpullulanで被覆することにより血中での安定性が増加する。しかしpullulanは細胞特異性がないため癌細胞に対するtargetingとはなり得ない。本研究ではin vitroの実験でgalactose残基をpullulanに導入することによりリポソ-ムの癌細胞(AH66およびHuH7)に対する特異性が高まり,かつラット正常肝細胞では増加しなかった。更にgalactose残基のうち単糖であるgalactosamineより二糖である1ーaminoーlactoseを導入することにより癌細胞に対しての取り込みが高まることが分かった。また抗癌剤であるアドリアマイシンを封入したリポソ-ムを癌細胞(AH66)に投与すると1ーaminoーlactoseを導入したリポソ-ムではアドリアマイシン封入pullulan被覆リポソ-ムに比し癌細胞の殺細胞効果は良好であった。ヌ-ドマウスにAH66を移植したin vivoの実験でもほぼ同様の実験結果であり,1ーaminoーlactose導入pullulan被覆リポソ-ムは腫瘍部への取り込みは最も高かった。リポソ-ムの粒子径での比較では,平均粒子径350nmよりも50nmと小さくすることで腫瘍部への取り込みはより高まり,脾,肺の網内系への取り込みは減少した。 人工細胞膜であるリポソ-ムはモノクロナ-ル抗体と異なり,免疫原性はなく反復投与しても副作用はほとんど出現しないと考えられる。本研究結果より1ーaminoーlactoseを導入したpullulan被覆リポソ-ムは腫瘍への指向性はより選択的となり,肝癌に対するミサイル療法として今後臨床応用可能と考えられる。
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