研究概要 |
1.ヒト膵臓癌におけるEstradiol(E2)およびEstrogen Receptor(ER)の免疫組織学的検討:ヒト膵癌組織における免疫組織化学的検討ではE2は男性;83%、女性;75%に陽性であった。凍結標本を用いたERの生化学的測定および免疫染色は陰性であった。 2.膵癌のmyc、cーerbBー2遺伝子産物およびEpidermal Growth Factor Receptor (EGFR)、Epidermal Growth Factor (EGF)の発現と悪性度:ヒト膵癌組織における免疫組織化学的検討ではEGFは72%、EGFRは36%、癌遺伝子蛋白では、cーerbBー2が28%、Nーmyc,cーmycがそれぞれ9%,39%に認められた。予後との関連が示唆される組織学的前方視膜浸潤(s)はEGF、EGFR、cーerbBー2の発現陽性のものは陰性のものに比して、有意に高率であった。生存期間については、EGF、EGFR、cerbBー2陽性症例(7.5±1.3ヶ月)、は陰性症例(11.7±1.9ヶ月)に比して、有意に短縮していた。Nーmyc,cーmycの発現と臨床病期とは有意の相関はみられなかった。 3.ヒト膵癌におけるAgーNORs染色からみた腫瘍細胞増殖能の検討:Nucleolar Organizer Regions(NORs)は細胞増殖能を反映する。正常膵組織、慢性膵炎のAgーNORs指数はそれぞれ1.86±0.38,2.14±0.53で、膵癌の4.02±1.19はこれらに比し有意に高い値を示していた(P<0.01)。比較対象として用いた胃癌、大腸癌のAgーNORs指数はそれぞれ6.35±1.32,7.66±1.35で、膵癌はいずれと比べても有意に低い値であった(P<0.01)。 4.膵炎自然発症ラット(WBN/Kob)における膵癌発癌実験:通常のazaserinによる膵発癌がWBN/Kobラットで見られなかったため、Dimethylbenz(a)anthracene (DMBA) 1.0mgを直接膵臓に投与する方法による発癌実験を行った。約40%の動物の膵臓に腫瘍が発生し,管状構造を持つ腺癌であった。
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