研究概要 |
心臓外科領域において、術中の心筋虚血再潅流障害の予防は手術成績を左右する重要な要因の一つである。この虚血再潅流障害にはCaイオン動態の変化がその中心的役割を果たしていることが明らかとされている。本研究においては再潅流時におけるCaイオン動態の制御機構の病態を把握し心筋障害の発生機序を解明することを目的とした。方法はラット摘出心潅流装置を用い再潅流液中のイオン(Ca,Na,H)が虚血後心機能及び再潅流時creatine kinase漏出に与える影響を実験的に検討した。 実験1:再潅流液中水素イオン濃度(pH)が虚血後心機能に及びす影響について検討した。再潅流液中のpHを6。8,7。4,7。8の3段階に変化させ検討した結果、pH6。8で再潅流障害が有意に軽減された。 実験2:再潅流液中Na,Ca濃度の影響について検討を行なった。再潅流液中Na濃度135,75,25mM、Ca濃度1。5,1。0,0。5mMの各々の組み合わせによる9群において検討した。再潅流障害はNa濃度依存性に軽減しCa濃度依存性に悪化した。 実験3:Na^+-H^+交換機構阻害剤であるamiloride(1。0-100μM)を再潅流液中に添加し、その影響を検討した。再潅流障害は濃度依存性に改善した。 以上の結果より、再潅流障害発生機構としてNa^+-H^+交換機構およびNa^+-Ca^<2+>交換機構の関与が示唆された。 今後の研究課題としてNa^+-Ca^<2+>交換機構の影響を明確にするため、細胞内のNa^+およびCa^<2+>濃度変化を直接測定し再潅流時の細胞膜イオン動態の証明を行なうことが必要であると思われた。
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