研究概要 |
1.移植心および血管移植モデルにおける動脈硬化巣の誘導 心臓移植は日本白色種家兎を用い、以下4群の異所心臓移植を行った。1)無処置群、2)1%cholesterol負荷群、3)cyclosporin投与群、4)cholesterol+cyclosporin投与群。移植心拍動は1、2群では平均6.6日で停止し、3、4群では、cyclosporinの免疫抑制効果により術後5週目に犠牲死させるまで心拍動は続いた。内膜把厚は、0ー25%狭窄を1+、25ー50%を2+、50ー75%を3+、75ー100%を4+と分類すると、1群では、1.0±0.0,2群:1.6±0.2,3群:1.8±0.5,4群:3.3±0.3であった。血管移植は、cyclosporin投与群、cyclosporin+cholesterol投与群の2群に行い、前者の内膜把厚は内腔面積の27.1%を占め、後者は37.6%を占め、cholesterol負荷群に強い内膜把厚を誘導しえた。 2.動脈硬化巣内におけるPDGF(Platelet Derived Growth Factor)の局在 PDGF B Chainに対するmonoclonal antibody(MAb)であるPGFー007(持田製薬より提供)を用いて、移植心冠動脈硬化巣と移植血管内膜肥厚巣内のPDGFの局在を検討した。20倍希釈のPGFー007を一次抗体として、抗actin MAbであるHHF35により明かとなった血管内膜肥厚巣内の平滑筋細胞増殖部および抗macrophage MAbであるRAM11に陽性である泡沫細胞集簇部を特異的にPAP法にて免疫組織化学染色を行った。本法では増殖平滑筋細胞内、および泡沫化したマクロファ-ジ内にはPDGF陽性反応は認められなかった。しかしながら、PGFー007は反応系が微妙であり、組織の固定法、MAbの希釈率、染色法など再検討を要し、この結果よりPDGFは存在しないと結論できないと考えられた。
|