研究概要 |
1.砂ネズミの両側頚動脈5分間閉塞モデル(海馬の遅発性壊死)において,海馬,中脳,大脳皮質の神経成長因子(NGF)を,一過性虚血の3時間,1日,2日,3日,7日後にtwoーsite enzyme immunoassay(EIA)法にて定量した[Furukawa et al,1983;Matsui et al、1990].海馬において,NGFは虚血前の平均値0.8ng/gと比較して3時間後より低下する傾向を示し,2日後には平均値0.4ng/gと統計学的に有意に低下し(p<0.05),7日後には再び虚血前の値に上昇した.中脳,大脳皮質においてはた.統計学的に有意な変動は認められなかった.このこ とは,虚血後の早期からNGFがダイナミックに変動し,海馬細胞の壊死に影響を及ぼしている可能性を示唆する.7日後にNGFが再上昇したことは,おそらく反応性に増加したastrocyteからのNGFの分泌によるものと思われる. 2.ゴルジ染色による海馬の形態学的変化としては,虚血3時間後に樹状突起は変性を始め,1〜2日後basal dendrite,apical dondriteは更に障害を受け,7日後には完全に消失したが,NGFの虚血前1回の脳室内投与(10μg)にて樹状突起の変性は軽度抑制された.NGFの持続的脳室内投与を試みたが,現在のところNGF1回投与と比較して有意な改善効果は認められていない. 3.岐阜薬科大学の古川昭栄先生の開発したNGF"合成促進物質"4ーmethylcatechol[Furukawa and Furukawa,1990]の投与(腹腔内注入)がNGF脳室内投与と同様な海馬壊死予防効果があるかを検討した.虚血3時間前および1日後,2日後の連続投与では効果は認められなかった.虚血の2日前および1日前にも更に追加して投与することで初めて壊死予防効果が認められたが,NGF自体の脳室内直接投与の効果には及ばなかった.
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