研究概要 |
悪性グリオーマは周囲正常脳へ浸潤性に増殖するため治癒切除が困難であり,術後に各種治療を加えてもほとんどの例で再発を逸れない。このため,悪性グリオーマの治療成績は今日でも著るしく不良である。こうしたグリオーマの浸潤性格は、単一の形質の発現によるものではなく多くの形質発現の複合と考えられるが,その中でも腫瘍細胞における接着能の変化が重要と考えられる。今回,神経系組織において重要と考えられる細胞接着分子N-カドヘリンを3種のラットブリオーマ株細胞(9LC6,RG12)で,そのmRNAレベルでの発現を検討した.その結果,mRNレベルでのN-カドヘリンの発現は細胞株間で差がみられた。すなわち,N-カドヘリン-mRNAは腫瘍細胞では3本の異なるサイズのバンドが確認され,それぞれの発現の程度が細胞間で異なっていたが、特に、最大のバンド(5.2Kb)の発現に差がみられ,RG12で強く,C6で弱く、9Lでは中間の発現であった。これらの発現の程度は、in vitro aggregation assayでみたそれぞれの細胞株の接着能とよく相関していた。このことから,N-カドヘリンはグリオーマ細胞において細胞間の接着能に関与しており,ひいてはグリオーマの浸潤能に係わっていることが示唆された。
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