研究概要 |
初年度は,成犬及び幼若犬において脳虚血モデルをいかに作製するかに主眼をおいた。その結果犬では椎骨底動脈から栄養されるposteior circulation優位の循環動態をとることより,椎骨動脈よりカテ-テルを挿入し塞栓物質を注入することにより全脳虚血モデルが,又両頚道脈と両椎骨動脈を結禁しさらに脱血を加えることにより虚血モデルが作製可能であることが判明した。 次に2年度では,両側頚動脈及び椎骨動脈の一時的結禁に加え,20ml 1kgの脱血による低血圧を負荷し,βーATPレベルを正常値の1/3に低下させ15分間維持することにより脳虚血モデルを作製した。血流再開後βーATPはコントロ-ル値を1とすると生後3ケ月の幼若犬では,0、90±0、001,1ケ月群では0、97±0、004まで回復したのに対し,生後1年群では0、71±0、05にとゞまった(P<0、005)。又PCrは生後3ケ月群で0,9±0,01,1ケ月群で0、94±0、04に対し生後1年群では0、59±0、12(P<0、01),Piは3ケ月後で1、08±0、03,1ケ月群で1、05±0、03に対し,1年群では,1、36±0、13(P<0、05)といずれも生後1年の成熟犬で有意に回復が不良であった。一方脳波では,生後1年群では回復を認めなかったが,生後3ケ月群では,血流再開後4時間でわずかに回復の兆しを示したのに対し,生後1ケ月群では血流再開後1時間で回復を示し,コントロ-ルの80%まで回復した。以上の結果より,末成熟群と成熟群との間で脳虚血からの回復に有意差を認め,且つ生後1ケ月の群では,3ケ月及び1年の群に比べ,可逆性,可塑性が良好な結果を示した。
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