研究概要 |
ハムスタ-に継代維持している骨肉腫実験系を用い,肺転移形成に対する機序の研究を行った。従来当科で継代維持しているハムスタ-骨肉腫(以下,従来株とする)から,より早期に肺転移をきたす株(以下,高肺転移株とする)を作成した。高肺転移株は,従来株の肺転移巣を次のハムスタ-背部皮下に移植し,これを繰り返し,in vivo selectionしたものである。この結果,従来株では6〜8週で肺転移をきたしていたものが,約3週で肺転移を起こすようになった。肺転移の形成,成長に関する研究として,我々の実験系の中で高肺転移株と従来株をin vitroの系に移しこの両系を肺組織抽出液を添加して培養,成長の差を細胞数で測定した。その結果,肺組織抽出液を添加して培養した高肺転移株は細胞数の増加が大きかった。これは肺組織抽出液内のなんらかの物質が高肺転移株の骨肉腫細胞の増殖を促進している可能性を示唆する結果であった。また従来株を肺組織抽出液を添加し培養した結果では,高濃度で細胞増殖の抑制,低濃度で促進された。肺転移の形成においては,腫瘍細胞が静脈血中に遊離し,肺の毛細血管に塞栓を生じるという血行動態による原因が考えられるが,これだけでなく正常な肺組織が骨肉腫細胞の増殖に適した環境であることも重要な要因と考えられる。この実験で,肺組織内に骨肉腫細胞の増殖を促進する因子があり,肺転移巣で成長する腫瘍細胞はこの因子に対する適応能力が高い細胞であった。 昨年度の研究で、細胞接着因子の骨肉腫細胞の肺転移に関する研究を行ったが,肺組織抽出液中のなにが細胞増殖に関与しているのかを,細胞接着因子との関連で調べて行きたいと考えている。
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