研究概要 |
人の骨粗鬆症は、加齢、閉経、不動等によって生じる。その病態では、全身的にはカルシウム代謝を調節する各種のホルモンが関与し、局所的には骨組織における骨代謝を調節する局所因子が関与している。ラットの女性ホルモン喪失(卵巣摘出術)と不動の併用による実験的骨粗鬆症を作成して、骨粗鬆をきたした局所である骨組織の細胞中の局所因子のmRNAの発現を検索した。mRNAの発現は、摘出した骨の細胞にcDNAプローブを作用させてノーザンブロット法によって測定した。前述の骨粗鬆化のラットの脛骨の細胞のオステオカルシンのmRNAは有意に増加するのを認めた。しかし、TGF-βのmRNAは、骨髄細胞においては増加していたが骨の中の細胞では僅かの増加であった。次に、骨粗鬆化をきたすステロイド剤の投与の実験を行なった。ラットを用いて、デキサメサゾン(DEX)を腹腔内に1回投与して、上述の方法でオステオカルシンのmRNAの発現を検索した。DEXの投与により、脛骨の中の細胞(骨芽細胞)のオステオカルシンmRNAの発現は著明に減少した。1mg/kgのDEXでは投与後72時間にて投与前の値に回復したが、100mg/kgのDEXでは投与後24時間にてオステオカルシンmRNAの発現が全く認められなくなり、投与後96時間でもその発現が全く認められなかった。さらに、1,25(OH)_2D_3とそのアナログである2β-(3-hydroxypropoxy)-1,25(OH)_2D_3[ED-71]0.1μ/kgを経口で1回投与した後、前述の方法で脛骨の中のオステオカルシンmRNAの発現を検索すると、オステオカルシンmRNAの発現は、これらの薬剤の投与後有意に増加した。一方、骨芽細胞様細胞RDS17/2.8を用いたin vitroの実験でも投与後に有意の増加を示した。以上のことから、エストロゲン、1,25(OH)_2D_3等の全身性の因子は、局所因子(オステオカルシンやTGF-β)を、その転写の段階で制御していると考えられる。
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