研究概要 |
高血圧自然発症ラット(SHR)にみられる大腿骨頭壊死の原因究明の一かんとして、骨頭に作用するストレスの程度と壊死発生との関連を検索した。6週齢のSHRおよび対照として京都ウイスタ-ラット(WKY)を用いた。ラットの大腿骨頭に作用する荷重量を変化させるため以下の処置を加えた。A群:WKY無処置,B群:SHR無処置,C群:SHR坐骨神経切断,D群:SHR坐骨神経および大腿神経切断,E群:一側後肢下腿切断。各群を15週まで飼育後屠殺,骨頭壊死,骨端核骨化遅延および骨頭下成長軟骨帯異常の発生頻度を各群で比較した。 骨頭壊死の発生頻度はA群20骨頭中15%,B群20骨頭中60%,C群16骨頭中25%,D群20骨頭中0%,E群の切断側10骨頭中0%,E群の非切断側10骨頭中40%となり,SHRでは骨頭に作用するストレスが減少していくにつれて壊死発生頻度は低下していた。骨化遅延や成長軟骨異常の発生頻度も壊死のそれと全く同様であった。 以上のことはSHRにおける大腿骨頭壊死は、骨頭外側への、しかも通常のactivity程度のストレスで発生することを示しており,この部における軟骨組織の異常の存在が示唆された。 それで、この軟骨組織の異常を明らかにするために骨頭壊死発生前の幼若SHRにおける大腿骨近位成長軟骨帯および関節軟骨の形態学的変化を検索した。生後5,6,7,8,9週目の大腿骨頭の前額面脱灰薄切切片に対し、組織学的、免疫組織化学的検索を行ないまた、成長軟骨細胞を電顕的に調べた。関節軟骨では対照群に比して特に染色性の異常はみられず、またプロテオグリカンの局在にも差はみられなかった。しかし成長軟骨細胞には壊死発生前より変性を示す所見がみられた。以上より軟骨組織の中でも特に成長軟骨帯に異常のあることが推測され、今後この方面への研究が必要となるであろう。
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