自家筋力による骨折の発生機転に関する人間工学的研究

• 研究課題/領域番号: 02670667
• 研究種目: 一般研究(C)
• 配分区分: 補助金
• 研究分野: 整形外科学
• 研究機関: 慶応義塾大学
• 研究代表者: 矢部 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50084554)
• 研究分担者: 小川 清久 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20102832) ; 井口 傑 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60051851)
• 研究期間 (年度): 1990
• 研究課題ステータス: 完了 (1990年度)
• 配分額: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円); 1990年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
• キーワード: 自家筋力 / 上腕骨 / 骨折

研究概要

31症例の腕相撲による上腕骨々幹部骨折をX線学的に分析した結果、全症例に外旋型螺旋骨折が存在したことから、近位内旋・遠位外旋による捻転力が骨折の主原因と考えられる。また、保存処理を施した上腕骨を用いたねじり試験より、上腕骨を骨折させるには約30Nm以上の捻転トルクが必要であることがわかった。
しかしながら、自家考案の実験装置を用いて計測した等尺性収縮により内旋筋群が能動的に発生し得る準静的な捻転トルクは、姿勢の如何にかかわらず、上腕骨を骨折させるために必要なものと比べ有意に小さいものであった。一方、重心移動を伴わせた場合および手先に急激な変位を与えた場合には、内旋筋群において急激な筋放電の増加が認められたばかりではなく、上腕骨に作用する捻転トルクも骨折に至るほどではないが増加した。以上より、腕相撲による上腕骨々幹部骨折のようないわゆる自家筋力による骨折は、筋の自動収縮に起因するのではなく、最大自動収縮した筋が急に他動的に伸張されることにより等尺性収縮以上の筋力を発生し得るために生じると考えられる。
今後は、筋力などの生体内力が推定・予測可能なコンピュ-タ・シミュレ-ションを開発するとともに有限要素法を用いることにより、種々の動作と受動的要因が上腕骨々折に与える力学的影響の検討およびより精密な自家筋力により骨折の発生機転の解明を行うつもりである。