研究分担者 |
橋本 三四郎 久留米大学, 医学部・整形外科, 助手
平岡 弘二 久留米大学, 医学部・整形外科, 助手
南谷 和仁 久留米大学, 医学部・整形外科, 助手 (80248434)
柿添 光生 久留米大学, 医学部, 助手
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研究概要 |
肺転移を形成するまでの間にはいくつかのプロセスが必要である。その初期の過程では、まづ固形腫瘍から個々の腫瘍細胞が遊離して血管基底膜へ侵入しなければならない。血管基底膜はタイプIVコラーゲン、ラミニン等から成り、腫瘍がこの膜を通過するにはこれらの膜成分を変性させ小孔を形成しなければならない。一方,膜成分を変性・消化させるものとしてはメタロプティナーゼ(matrix metalloproteinase,以下MMP)が知られている。我々は骨軟部腫瘍のMMP活性を調べ,肺転移能との関係で検討を加えた。方法論として培養細胞を用いるため,先づ培養細胞株の樹立に努めた。その結果,4種の骨肉腫,2種の軟肉腫,4種の転移性骨腫瘍(癌),4種の悪性線維性組織球腫,3種類の骨巨細胞腫について細胞株を樹立することができた。無血清培地下の各培養細胞にMMP産生刺激剤としてのインターロイキン1(以下IL-1)を加え、その培地を採取して電気泳動に流し、トランスファー後、抗MMP抗体を作用させ,その後発色させてバンドの色調により活性度を検討した。その結果,肺転移能の高い細胞株は多数バンドのゼラチナーゼ活性を有していた。また細胞は培養環境を変えることでもその形質発現に大きな影響を与えるため,タイプIコラーゲン,タイプIVコラーゲンゼラチン等をコーティングした培養中で同様の実験を行うと,特にゼラチン下で大きな活性を増幅してみることができた。骨腫瘍組織中には破骨細胞の存在をかなりの頻度で認める。我々は,破骨細胞様の多核巨細胞を腫瘍細胞のconditioned mediumを用いて実験的に作製し,組織化学的検索からこの細胞がIL-1を産生することが示された。従って以下のように考えている。腫瘍細胞は破骨細胞の形成をもたらし,この破骨細胞はIL-1の産生にて腫瘍細胞のMMP活性を高め,その結果局所の骨破壊や肺転移が進展する。
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