研究概要 |
骨系統疾患の病因の解明は,予防や治療法の開発に不可欠である。易骨折性を特徴とする骨形成不全症の長管骨骨幹部は著明に萎縮,細小化しているが,今回の研究成果によれば,骨幹部皮質骨の形成,吸収に直接関与する骨膜組織中の細動脈の内皮細胞と平滑筋層,毛細血管の内皮細胞に異常が存在し,骨膜における虚血性循環障害の存在が示唆された.この結果はClinical Orthopaedics and Related Research,1992に発表する. 動物実験と異なりヒトの病的組織の計画的研究の遂行は困難であるが,われわれは,骨系統疾患の一つであるCoffinーLowry症候群の3例を検討することができた.その結果,本疾患がcalcium,pyrophosphate dihydrate crystal deposition diseaseの一つであり,同時にコラ-ゲンとプロテオグリカンの代謝異常でもある可能性を明らかにした.結果は,Clinical Orthopaedics and Related Research 275,1992に発表した. われわれは,先に軟骨無形成症の軟骨のクレアチンキナ-ゼ活性に関する研究成果を発表したが(1987年),今回は動物実験によりCKーBが軟骨の成長に関連を持っていることが判明し,Clinical Orthopaedics and Related Research 271,1991に発表した.その後,軟骨から骨へ移行する際のCK,S100の変動について知見を得て,中部整災学会(1991年)で発表し,現在論文としてまとめている. 骨形成不全症の患児の多くに髄内釘が刺入されているが,その骨幹部皮質骨の萎縮傾向は常に問題となる.従ってその改善を目的として,髄内釘を刺入した骨に磁気刺激を加え,骨量の増大を図る動物実験を計画し,刺激条件を種々に変更しながら実験を続けてきたが,現在のところ未だ有意の結果を得るに至っていない.
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