研究概要 |
モノクロ-ナル抗体2種類を組み合わせる二重染色法を用い,各種麻酔法や各種の手術における免疫変動について検討を行なった。さらに,これらの変動を励起す可手能性のある物質として血漿コルチゾ-ルに注目しそのを変動を比較検討した。また術中に示される免疫変動に対して,その変動を抑制しうる可能性のある薬剤について検討を行なった。 (1)開頭術において,Leu4の低下,Leu3aの低下,Leu2aの増加が認められた。従来よりの免疫系指標のLeu3a/leu2a比は有意に低下した。Leu3aとleu2aの二重染色によりInducer T cellの減少とSuppressor T cellの増加とCytotoxic T cellの減少が認められた。 (2)胃摘出術を施行された患者において,硬膜外麻酔を主にした群では,他の吸入麻酔薬で認められた免疫抑制現象,すなわちLeu3a/Leu2a比の低下,Inducer T cellの減少,Supporessor T cellの増加等が発現しないことが判明した。硬膜外併用全身麻酔の特殊性が示された。 (3)大手術と小手術における術中の免疫変動についてエンフルレン麻酔下で検討した。その結果,大手術群では上記免疫抑制現象が発現したが小手術群では全く励起されなかった。この両群の血漿コルチゾ-ルの変化を比較した場合,前者では数倍から十倍以上もの変動を示したが後者では有意な変化はなく,コルチゾ-ルの免疫への影響が示唆された。 (4)胃摘出術患者において硬膜外群とのハロセン群に分け,その血漿コルチゾ-ル値を計測・比較したが,免疫変動に比べ有意差は見出し得なかった。 (5)また抗手術侵襲作用を持つとされるウリナスタチン30万単位の投与により,これらの免疫抑制現象の一部が有意に抑制されることが判明し,手術侵襲と免疫,内分泌等の関連が密接であることが示唆された。
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