研究概要 |
1.臨床研究;(1)下殿動注と放射線(一部に陽子線追加照射を含む)療法:この治療法を16症例に行い、13例に浸潤度の低下を認めた。尚、膀胱全摘を拒否した5症例中、1例のみ再発した。また膀胱全摘を施行した11例中3例死亡したが、膀胱癌死は1例のみであった。以上の結果を踏まえ、次のような治療法を行った。 (2)内腸骨動注と放射線の併用:局所に限局した浸潤性膀胱癌に対し、CDDPとMTXを内腸骨動脈より動注と放射線と腫瘍部のみへの陽子線を追加し、膀胱を保存する治療法に転換した。1992年12月末日までに21症例に本療法を行い、19例(90.5%)にCRを得た。また膀胱を保存したのは18例で、このうち2例は他の原因で死亡し、2例は膀胱内再発しその内の1例は膀胱全摘を施行した。1例肺転移を認めたため転移巣の切除を行った。残りの膀胱保存13例は、まだ観察期間が短いものの再発を認めていない。したがって本療法は非常に効果的であり、膀胱を保存できるものと思われる。但し今後さらに症例の積み重ねと、長期の観察を必要とする。 2.基礎研究:マウス膀胱発癌を化学療法と陽子線療法後の膀胱保存のモデルとして用い、前癌状態に対するCDDPと陽子線の効果を検討した。85頭のC3H/He雌マウスに0.05%のBBNを飲料水として10週間与えた。その1週間後にマウスを5群に分け、CDDP単独投与群、陽子線単独投与群、CDDPと陽子線併用群、対照群とした。実験開始より30週間後にマウスを屠殺して、膀胱の発癌率を比較した。その結果、陽子線単独照射群(4-16,25%)、CDDPと陽子線の併用群(6/13,46%)発癌率は、対照群(15/18,83%)に比べて、有意に低かった。この結果は、臨床での膀胱保存療法の有用性を支持するものと思われる。
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