研究概要 |
カルシウム・リン脂質結合蛋白(CPBs)は、我々をはじめとして種々の施設より報告され、世界的には、annexin femilyとして統一名称が使用されつつある。今回は、一つには、CPBsの抗phospholipase作用と、抗凝固活性について検討し、もう一つは、CPBーIについて、そのmRNAのnothern blottingについて基礎的に検討した。具体的には、前者では、まずCPBーI,CPBーII,CPBーIII,lipocortinにおいてのphospholipase A_2(PLA_2)およびphospholipase C(PLC)活性の抑制能を種々条件下で検討した。すなわち、至適カルシウム濃度、至適pHの異なる由来の違うPLA_2での検討、さらに、同一モル濃度における各CPBsの抑制能の比較などである。その結果を以下に示す。1)pH8.0が至適pHであるブタ膵由来のPLA_2とpH6.5であるマムシ毒由来のそれで,CPBーIでの最大抑制活性出現のカルシウム濃度は、どちらも20mMであった。一方、CPBーIIでは、どちらも10mMであった。2)ブタ膵由来のPLA_2の抑制活性は、同一モル濃度で比較し、CPBーII>CPBーI>CPBーIII>lipocortinの順であった。これは、マムシ毒由来のPLA_2でも同様の傾向を示した。さらに、抗凝固活性も同様の順を示した。3)同一モル濃度におけるPLC抑制は、CPBーI>CPBーII>CPBーIII>lipocortinの順であった。PLA_2とPLCでの差は、各々の基質であるphosphatidyl cholineとphsphatidyl inositolに対するCPBsの結合能の差と一致した結果であった。CPBsとリン脂質の結合能の結果からもふまえて考察すると、CPBsのカルシウム結合ドメインが、PLA_2,PLC,及び凝固抑制に共通した抑制活性ドメインであるものと推察された。次にCPBーI mRNAについては、胎盤組織よりRNAを抽出し、agarose電気泳動後にmenbraneに転写し、 ^<32>PをラベルしたCPBーI cDNA断片をprobeとしてhybridizationを行った。mRNA抽出、hybridizationの条件設定などで苦労したが、胎盤では約1.6kbの単一のCPBーI mRNAが証明された。
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