研究概要 |
本研究により、得られた成果をまとめると以下のように要約される。 1.リンパ節リンパ球の抗腫瘍性リンホカイン産生能の有無に関する評価:リンパ節リンパ球はin vitroにおいて無刺激状態では全く抗腫瘍性リンホカインの産生が認められなかった。このことから生体内では担癌状態でもリンパ節内で抗腫瘍性リンホカインの産生は行われていないと推測された。in vitroにおいてはPHA,Con-A等で刺激することにより容易にIFN-γ,TNF-α,βの産生が誘導され、これらの抗腫瘍性リンホカインにより細胞増殖抑制効果の発現が観察された。但し、対象とする標的細胞のこれらのリンホカインに対する感受性の差により細胞増殖抑制効果を実際に発現している抗腫瘍性リンホカインは異なっていた。例えば、子宮頚癌培養細胞株HeLaに対しては、IFN-γが、子宮内膜癌培養細胞株RL-95-2に対してはTNF-αがその細胞増殖抑制効果の主役を担っていた。2.リンパ節リンパ球の抗腫瘍性リンホカイン産生のin vitroにおける誘導に関する検討:In vitroにおいてPHA,Con-A以外の生体内で使用可能な薬剤での抗腫瘍性リンホカイン産生誘導の可能性について検討を行った。その結果、IL-2が有望な薬剤として今後の検討を行う余地があると考えられた。3.リンパ節リンパ球と末梢血リンパ球との比較:末梢血リンパ球においてもリンパ節リンパ球と同時にPHA,Con-A刺激により、HeLa細胞に対する細胞増殖抑制を発現する抗腫瘍性リンホカインの産生が認められた。同時にIFN-γ,TNF-αの産生もリンパ節リンパ球に比しやや低いながら認められた。IL-2刺激によるIFN-γ,TNF-αの産生はむしろリンパ節リンパ球に比し、高い傾向が認められた。4.抗腫瘍性リンホカインの同定:IFN-γ,TNF-α,TNF-βの産生が認められたが、中和抗体を用いて実験によれば腫瘍細胞増殖抑制効果の主体はIFN-γ及びTNF-αと考えられた。
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