研究概要 |
1)絨毛癌抑制遺伝子群の局在する染色体を同定するために、PSV2neoで標識した正常ヒト1-22番染色体を単一で保有するマウスA9細胞ライブラリーの中から1,2,6,7,9,11番染色体保有A9細胞と絨毛癌細胞CC1との間で微小核融合を行った。それぞれの融合細胞について(1)ヌードマウスでの造腫瘍性(2)足場非依存性増殖能(3)腫瘍増殖速度(4)細胞倍加時間(5)血清要求性(6)細胞飽和密度を検討した。その結果、CC1細胞と比較して7番染色体移入クローンにのみ造腫瘍性および足場非依存性増殖能の抑制、細胞倍加時間の延長を観察した。他の微小核融合クローンではこれらの抑制を観察しなかった。しかし、血清要求性および細胞飽和密度はCC1細胞と7番染色体単一移入CC1細胞間では差を認めなかった。2)マウスF9細胞の分化に関与するヒト染色体を同定するために、F9細胞に正常ヒト1,2,6,7,9,11,18,19番染色体を微小核融合法にて単一移入した。その結果、7番染色体単一移入細胞のみが親細胞の保有する細胞増殖特性をすべて著明に抑制した。さらに、細胞形態も大きく変化し、内胚葉系列の細胞に類似した細胞の他に、多核で胞体の大きな合胞体細胞類似の細胞が同クローン中に多数出現した。種々の分化関連マーカーによる検索から7番染色体単一移入細胞ではEC細胞形質が消失し、壁側内胚葉細胞類似の分化関連マーカーの発現を認めた。1,2)の結果より、7番染色体上には絨毛癌抑制に関与する優性な遺伝子群とともに、F9細胞を分化誘導する遺伝子群が存在することが推測された。
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