研究概要 |
子宮体癌組織中のアロマターゼ活性は正常子宮組織に比べ高く、この酵素活性が癌の発育増殖と密接に関与している。ヒト胎盤アロマターゼ自殺阻害物質(14α-OHA,5α-DHNET)はこの酵素活性を効率よく抑え、癌細胞の増殖も抑制すると推察し、実験計画を立て、以下の成果が得られた。(1)14α-OHA,5α-DHNETは子宮腫瘍(子宮体癌,子宮筋腫)組織中のアロマターゼ活性を有意に抑制した。(2)14α-OHA,5α-DHNETのウシ副腎中のデスモラーゼ活性(CSCC,C_<11->,C_<21->水酸化酵素活性)への影響を検討したが、いずれの阻害物質もほとんど影響しないことが明らかになった。(3).14α-OHA自身はヒト胎盤ミクロゾーム中のアロマターゼの作用により、ステロイドA環の芳香化が全く生じないことが明らかとなった。(NETは部分的に芳香化されるが、その代謝産物の5α-DHNETは構造上、芳香化されない。)(4).14α-OHA,5α-DHNETは未熟雌ウサギ子宮細胞質より作製したER、PR、ARに対し、ほとんど結合親和性のないことが明らかとなった。(5).子宮体癌細胞株(HHUA、Ishikawa,HEC-59)におけるアロマターゼ活性と細胞増殖能(DNA合成能)を調べた。その結果、HEC-59細胞のみに高いアロマターゼ活性が認められた。また、HEC-59細胞はテストステロン添加により、そのDNA合成能が亢進した。しかし、このテストステロンによるDNA合成能の亢進は抗アンドロゲン剤同時添加で抑制されず、抗エストロゲン剤の同時添加で抑制された。したがって、子宮体癌細胞株の中にはアロマターゼ活性の高いものがあり、このアロマターゼが細胞増殖にも一部寄与していることが示された。また、アロマターゼによる、HEC-59細胞増殖能の亢進は14α-OHAの添加により抑制された。(6).子宮腺筋症の正所性内膜および異所性内膜組織の腺細胞にアロマターゼが局在していることを免疫組織化学的に立証した。今後はアロマターゼの阻害機構を更に解明するよう努めたい。
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