研究概要 |
本研究課題では嚥下動態の総合的評価により正常および病的嚥下機構の本態,さらに加齢の影響を明らかにした。 咽頭食道透視法による嚥下機構の解析:液体造影剤では咽頭流入像,喉頭流入像,喉頭蓋運動制限,固形造影剤では喉頭蓋谷貯留像,咽頭分割嚥下などの所見が高齢者群に高率に観察された。嚥下困難群でも高齢者群と同様な所見が検出された。まとめると,嚥下困難群,高齢者群では嚥下反射機能と食塊の推進力に支障をきたすものと考えられた。 嚥下圧,筋電図測定による嚥下機構の解析:イヌおよびヒトを対象として分析した。静止時陽圧を示す食道入口部内圧の嚥下時平圧化は輪状咽頭筋の弛緩により主に規定されていた。輪状咽頭筋の運動神経支配は咽頭食道神経により片側支配であった。正常成人30人を対象として嚥下圧測定を行ない,軟口蓋部,下咽頭,頚部食道各部位の信頼区間を明らかにし,5型の嚥下圧曲線分類法の定義値を設定した。嚥下圧伝搬曲線の規準化を計り,正常ではS字状を呈することを示し,嚥下圧波発生パタ-ンが一目瞭然に読みとれることを明らかにした。食道入口部内圧の平圧化は咽頭端と食道端で異なり,入口部の弛緩状態を解析するには咽頭端の嚥下圧を測定すべきであることが示唆された。あわせて平圧化開始時期および平圧化時間の信頼区間を設定した。 嚥下障害発症機構に関する総合的評価についての研究:嚥下障害例130例で嚥下機構の総合評価法を検討した。咽頭食道透視法への固形造影剤の応用は液体造影剤では検出しえない嚥下反射の減退や食塊推進力の低下が検出でき,優れた嚥下機能評価法であることが分かった。嚥下圧測定法では,嚥下中枢のプログラム状態は嚥下圧伝搬曲線法で,嚥下駆動力は嚥下圧曲線分類法で,食道入口部の弛緩状態は同部の咽頭端で測定すると,診断が可能であることが明らかにされた。
|