研究概要 |
(1)組織適合性抗原の発現と浸潤細胞の同定通常では角膜にはクラスII抗原は認められないが,ヘルペス感染に伴って,角膜実質細胞にクラスII抗原が発現することが明らかとなった。また,それと同期して遅延型T細胞に属するリンパ球の浸潤が盛んとなった。この事実は角膜ヘルペスの発症病理において遅延型過敏反応が重要な役割を果していることを示している。 (2)角膜ヘルペスにおける実質混濁の抑制角膜ヘルペスの治療においては如何に実質の混濁を抑えるかがポイントである。そこで,実験(1)の結果をもとに遅延型T細胞を抑制する方法としてanterior chamber-associated immune deviation(ACAID)を取り上げ,実質混濁に及ぼす効果を検討した。ACAIDを誘導してマウスでは遅延型T細胞の浸潤がわずかとなり,実質混濁の発生も抑制された。この事実はヌードマウスを用いた移入実験によっても確認できた。 (3)ワクチンによる潜伏感染の阻止単純ヘルペスウイルスの主要糖蛋白である Glycoprotein D (gD)とンターロイキン2(IL-2)とを結合させた,細胞免疫を誘導可能な新しいワクチンを用いて,潜伏感染を抑制できるか否かを検討した。従来から行われてきたウイルス蛋白の単独投与と比較すれば上皮および実質病変の発現を効率よく抑えたが,潜伏感染についての阻止効果は不十分なものであった。投与量や投与間隔などについて再考が必要である。 (4)点眼接種モデルの開発より自然な角膜感染モデルとして点眼接種による系を開発した。この一連の実験により,点眼接種に対する感受性にマウス系統間で大きな差があることが判明し,眼局所における非特異的な免疫学的因子の重要性がクローズアップされた。今後の研究の展開が期待できる。
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