研究概要 |
新たに製作したパーソナルコンピュータ使用の色弁別反応時間測定装置を用い,視野の各象限に呈示した色を認知する時間を測定,データ処理し,色認知の特性ならびに左右半球の優劣を検討した。 色の呈示は,黒板の中心に固視および予告用発光ダイオードを装着した。実験は,健康成人,視力良好な右利き10名を対象とし,両眼解放下で行った。反応時間の測定法は,被験者が指定された色を認知したらただちに手元の押しボタンを押す方法によった。コントロールとして,色を指定しないで得られた単純反応時間を用いた。いずれも右手で反応する場合と左手で反応する場合の両方行った。 左または右の視野,左または右の手の組み合わせによる反応時間の差異は,コントロールではほとんど認めなかった。しかし,色を認知し弁別するというtaskを課すと,反応時間は最も早かった左視野-左手の組み合わせでも,コントロールよりおよそ70msec遅れる上に,コントロールでは認めなかった各組み合わせ間の差異が認められた。 上述の事項は,色覚中枢の存在と半球間で側差があることを示すものと理解した。色弁別の場合は左視野-左手の組み合わせが最も早く,右視野-右手の組み合わせが最も遅かった。これは色覚中枢が右半球優位である場合の伝達経路のちがいでよく説明された。すなわち,前者は伝達経路が最も短く,後者は左右半球間を情報が2度も横断しなければならず伝達経路が長い。今回の実験成績は,色覚中枢の右半球優位性を支持するものであった。
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