研究概要 |
本研究期間内において2つの研究を行った。1:酵素組織化学実験、2:レクチン組織化学実験 1、エナメル芽細胞の細胞分化とGolgi stack内での各compartmentの確立との関係を、OsO_4染色性の変化とNAD Pase,TPPase,ACPase活性の分布変化を観察することにより調べた。NADPase,TPPase,ACPase活性は、細胞極性の転換がまだ起きていない内エナメル上皮細胞や分泌前期エナメル芽細胞で見られる発達期のGolgi stackにおいてすでに存在していた。しかし、OsO_4に染色性を示すGolgi cisternaが出現するのは、極性の転換が起こり、Golgi装置が核の遠位側に位置するようになってからであった。これらの結果から、エナメル芽細胞の細胞分化にともなうGolgi装置の発達において、cis側のcompartmentの確立が他のcompartmentに比較して時期的に遅くなることを示しており、Golgi装置の各compartmentの確立は細胞極性の転換後に行われることがわかった。 2、内エナメル上皮細胞や分泌前期エナメル芽細胞において様々な大きさのGolgi stackが、核の近位側や側方に位置して見られた。これら発達期にあるGolgi装置は、用いたCon A,GSーI,SBA,UEAーI,WGA,PNAに対してGolgi stack間でいくらかの多様性を示すものの、stackを構成する全てのcisternaで反応産物の沈着を認めるものが多く見られた。一方、分泌期エナメル芽細胞では、個々のレクチンの反応産物はGolgi stack内での分布に限局性を示した。これらのことは、発達期にあるGolgi stackのcisterna内には様々な糖付加酵素が共存している可能性を示し、この時期のGolgi stackはまだ十分にはcompartmentの区分を確立していないことを示していた。また、分泌期の所見は、エナメル基質内の糖鎖にはNーlinkedだけでなくOーlinkedの糖鎖も含まれていることを示すとともに、galactosyltransferaseが免疫組織化学的に示されているtrans側のcisterna内に分布しているだけでなく、cis側のcisternaにも分布していることを示していた。
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