研究概要 |
平成3年度において,高橋らの研究組織はヒト歯周疾患の歯肉における浸潤細胞について各種モノクロ-ナル抗体による免疫組織化学的検討を行い,それぞれの染色標体から陽性細胞についての分布や比率を求め,臨床所見とくに歯周ポケットの深さと対比した。対象は長崎大学歯学部附属病院第2保存科を受診したadult periodontitis(AP)31例とrapidly progressive periodontitis(RP)4例の歯肉である。切除歯肉から厚さ4.5μmの凍結切片を作成し,HーE染色とABC法による免疫染色を施した。使用した一次抗体は抗Tリンパ球抗体(Leu 2a,Leu 3a+3b,Leu 4+5b,Leu 7),抗βリンパ球抗体(KiB3,Leu14),抗単球・マクロファ-ジ抗体(KiM1,KiM2,KiM4,KiM6,KiM8,LeuM5),抗ランゲルハンス細胞抗体(HLAーDR,OKT6),抗ナチュラルキラ-(NK)細胞抗体(Leu 7,Leu 11b)などである。その結果,APの中で歯周ポケットが6mm以上の重症例とRPではβ細胞・サプレッサ-T細胞の著しい増加が認められた。一方,APの中で歯周ポケットが6mm未満の軽症例では重症例に比し,ヘルパ-T細胞が僅かに増加しているに過ぎなかった。NK細胞については歯周ポケットの浅い流例では不活性型NK細胞(Leu 7陽性・Leu 11b陰性)と活性型NK細胞(Leu 7陰性・Leu 11b陽性)の比はほぼ1:1であるが,歯周ポケットの深化と共に活性型NK細胞の増加傾向を示した。このことから,活性型NK細胞の存在が歯周疾患の進行と関連性の深いことが示唆された。単球・マクロファ-ジに関しては,いずれの病態群においても出現頻度は低く,かつ臨床病態との相関性は認められなかった。ランゲルハンス細胞抗体に対する陽性細胞は歯肉上皮内や上皮下に出現しており,Tリンパ球の多い症例で発現率の高い傾向を示した。以上の事から、歯周疾患の発現・進行には各種免疫担当細胞が病期に応じて複雑な相互関連を呈して機能発現していることが示された。
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