研究概要 |
1.歯胚の形成・発育過程におけるmelanocyteの動態について:イヌ胎児の胎生前期〜中期頃から上下の顎骨内の歯胚周囲の間葉系組織内にmelanocyteの出現がみられ、それより遅れて口腔粘膜上皮内にmelanocyteが出現していた。さらに顎骨内にmelanocyteの出現をみた部位は、口腔粘膜とは皮質骨を介して明らかに離れていた。したがって、胎生期にmelanocyteは顎骨内をmigrationして歯胚周囲に達することが明らかとなった。 2.歯の萌出後の顎骨内melanocyteの出現状況と分布に関する検討:検索には永久歯の萌出の完了した犬の顎骨顎骨内にmelanocyteがみられた。これらmelanocyteの出現部位はすべて歯根膜内であった。歯根膜内にmelanocyteをみたのはいずれも上顎で、前歯部に多く出現する傾向にあった。また、歯肉上皮との関連は連続切片によって否定できた。このような報告は未だ内外でなされてなく、新たな発見である。 3.ヒト顎骨内の歯原上皮遺残の動態について:顎骨を歯の根尖部から骨体部深層に向かって縦走する脈管神経を容れる細管内に多数の歯原上皮遺残が認められた。これらの歯原上皮遺残はとくに神経線維を伝わって顎骨体部深層にmigrationしていた。また、一部の歯原上皮はかなり細胞活性に富んでいるものと思われ上皮性歯原性腫瘍や非炎症性嚢胞の発生母組織となり得ると考えられた。 4.ヒトの歯原性腫瘍と嚢胞に関する臨床病理学的検討:1)間質の著しい骨増生を伴ったエナメル上皮腫例について,2)エナメル上皮歯牙肉腫について,3)歯槽部に限局したエナメル上皮腫について,4)歯原性上皮によって形成される導管様構造について,5)本邦におけるエナメル上皮腫の実態について,6)小児におけるエナメル上皮腫について,7)顎骨内に生ずる非歯原性の扁平上皮癌について
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