研究概要 |
本研究は、口腔内グラム陽性菌の口腔内疾患における病因的意義を産生サイトカインの面から明らかにするために、グラム陽性球菌より、細胞壁ペプチドグリカンや細胞質膜タンパクを分離して、これらの成分によりin vitroならびにin vivoでのヒト末梢血単核球、マウス脾単核球の刺激に基づくサイトカインの産生を検出し、以下の研究成果が得られた。マウス(C3H/HeN)脾細胞ではペプチドグリカン刺激により、GMーCSF,ILー3,インタ-フェロンの産生が誘導され、Ia^+,Mac2^+細胞が増殖することが明らかとなった。しかしながら、ペプチドグリカン刺激に対しては各系統のマウスの反応に著しい差があり、炎症反応と逆相関する。すなわち、炎症に抵抗性のマウス(C3H/HeN)はペプチドグリカンに対する脾細胞の反応性は強く、主にGMーCSFを産生するのに対して、炎症に感受性のマウス(Balb/c)はペプチドグリカンに対する反応性は弱く、炎症性液性因子であるILー1,PGEzの産生がみられる。この結果、マウスの炎症発症にはGMーCSFの産生の有無が重要であり、GMーCSFを中心としたネットワ-クの調節機構が重要であることが示唆された。さらに、ヒトについても末梢血単核球を用いて、各菌体成分刺激実験を進めた。ヒト末梢血単核細胞はマウスと異なり、ペプチドグリカン刺激には反応性は弱いが、細胞膜タンパク(MAP)刺激により強いDNA合成が観察された。しかも、細胞質膜タンパク刺激に対する末梢血単核球の反応性は特異なものであった。すなわち、刺激後5〜6日目にDNA合成のピ-クが観察されること、CD4^+T細胞の増殖が誘導されるのにもかかわらず、ILー2活性が検出されないこと、MAPがス-パ-抗源としての反応性を示すこと、などである。以上を要約すると、細菌菌体成分に対する反応性、特に、産生サイトカインの解析と活性化細胞の同定において、いくつかの知見が得られ、種々の疾患の病因解明の手掛かりが得られたように思われる。
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