研究概要 |
morphine(Mor)をはじめとする麻薬性鎮痛薬が中枢神経系の膜脱分極を抑制することはよく知られている。しかし、その抑制の生化学的な機作については明確でない。我々は既にmedium中に微量のFe^<2+>およびCa^<2+>が存在する場合、Morはsynaptic membrane(Na^++K^+)ーATPase活性を増加させることを認め、遊離調節機構に本酵素が関与する可能性を報告した(Brain Res.,510,92,1990)。本申請では、更に検討を加え以下の結果を得た。1)medium中にFe^<2+>が存在する場合、ミュ-agonistであるMor、morphiceptineおよびdynorphine A 3ー8はsynaptic membrane(Na^++K^+)ーATPaseを活性化したが、カッパーagonistであるdynorphineー(1ー8)ーoctapeptideではこのような活性化作用は認められなかった。これらのミュ-opioidsは、しかし、FeCl_2にCuCl_2を加えた場合や他の鉄以外の重金属により抑制された(Na^++K^+)ーATPase活性に対しては無影響であった。2)ミュ-agnistsまたはouabain,pーchloromercuribezoate,Nーethylmaleimideおよび5,5'ーdithiobis(2ーnitrobenzoicacid)による抑制に対しても本酵素を活性化しなかった。3)膜に結合したFe,Zn,Cuは、EDTAの4日間処置ではキレ-トされにくいが、重金属のキレ-ト剤であるBAL(2,3ーdimercaprol)処置でキレ-トされ、膜からある程度で脱離した。4)BALおよびcopper binding peptideで処置synaptic membraneでは、medium中にFe^<2+>およびCa^<2+>が存在する場合、低濃度のミュ-agonistsが本酵素活性を増加させ、このミュ-agonistsの活性化作用はnaloxoneの添加により拮抗された。より低濃度のミュ-agonistsが活性化することが認められた。これらの結果とわれわれの以前の結果から、ミュ-opioid agonistsはFe^<2+>の作用と拮抗してsynaptic membrane(Na^++K^+)ーATPase活性を増加させ、Cu^<2+>が共存する場合はこの活性化作用が減弱することを示した。
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