研究概要 |
本研究は歯の痛み感覚が食欲の中枢・視床下部外側野(LHA)にどのような投射経路を経て伝えられ,どのような応答を惹起するのかを,ratを用いてneuron levelで明らかにする事を目的とした。これまでの研究により明らかになった結果は次の通りである。 1歯髄の痛み感覚は,三叉神経脊髄路核尾側亜核でneuronを換えた後,中脳中心灰白質もしくは中脳網様体で再びneuronを換えて,LHAに到る複シナプス性の経路を辿ること。 2LHAの中でも三叉神経領域から痛覚性投射を受けるneuron群は,吻尾側方向の吻側2/3の鎖域には存在せず,尾側より1/3の側方部にのみ限局して存在する。また,限定れた領域の中でも約20%のneuron(220個中46個)が痛覚性刺激に応答するにすぎなかった。また,これらのneuron群はglucose非感覚性を示し,直接的に摂食機能を営むものではないと推測され,口腔内の環境情報を伝えてglucose感受性neuronを調節するneuron群と考えられる. 3LHA neuronは,対側歯髄刺激に対して平均潜時17.2msの誘発発射を示したが,反復歯髄刺激を加えると,数分間持続する増強発射活動を示した。この応答は視床下部弓状核刺激(30秒)によって抑制を受けることが知られた。 4視床下部弓状核によるLHA neuronの歯髄刺激応答の抑制は,naloxonの腹腔内投与およびion微量注入法によって拮抗されるものであった。
|