研究概要 |
唾液型シスタチン(シスタチンS,SA,SN)ならびにシスタチンCはヒトの各種体液に含まれる低分子システインプロテアーゼインヒビタ-である。これらのタンパク性インヒビタ-はシスタチンス-パ-ファミリ-のファミリ-IIに分類され、システインプロテア-ゼの活性調節や生体防御の機能が期待される。 本研究は「シスタチン」を分子生物学ならびに分子遺伝学の立場より解析して次のことを明らかにした。 (1)ヒト第20染色体に局在するシスタチン遺伝子ファミリ-(7遺伝子)によって産生されるタンパク質(121残基)が分泌の過程または分泌後にタンパク質分解やリン酸化を受けることによって「唾液中のシスタチン分子の多形や多重性」が生ずる。 (2)シスタチン遺伝子ファミリ-のメンバ-は次の通りである。CST1(シスタチンSN),CST2(シスタチンSA),CST3(シスタチンC),CST4(シスタチンS),CSTP1(シスタチン偽遺伝子),CSTP2(シスタチン偽遺伝子),シスタチンD遺伝子(対応するタンパクは単離されていない)。 (3)それぞれのシスタチン遺伝子は独自の制御機構のもとで、対応するタンパク質が必要とされる組織において発現される。 (4)シスタチン遺伝子ファミリ-の7遺伝子座位には遺伝性若年性脳出血性アミロイド-シス発症に関与する座位(CST3)が存在する。 (5)ある種のセリンプロテア-ゼインヒビタ-(ボ-マンバ-ク型インヒビタ-)とシスタチンス-パ-ファミリ-のファミリ-IIならびにIIIはその先祖を共有する。 (6)ファミリ-IIのシスタチン分子はセリンプロテア-ゼの阻害ドメインをかくまっており、このような機能ドメインは対応する遺伝子のエクソン部分に対比される。
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