研究概要 |
加齢と共に増加し、歯周疾患の罹患と関連性が深いと考えられている根面齲蝕に対する適切な修復法、二次齲蝕予防ならびに予防法の検討は急務と思われる。本研究プロジェクトは成人、特に中高年の齲蝕として問題となると考えられる根面齲蝕の保存修復法を、予防学的見地から検討するために計画され、以下に示すような研究成果を得た。 1.正確で再現性のある剪断接着疲労試験を試作し、4種象牙質接着剤の疲労に対する抵抗性を検討した結果、静的剪断接着強さには明瞭な差は認められなかったが,繰り返し疲労試験では明らかな差が認められ、口腔内で受ける咬合のストレスをシュミレ-トした動的試験法の必要性が示された(歯科材料・機械,10,1991;接着歯学,8,1990)。 2.コンポジットレジン修復の辺縁封鎖性を改善するため、傾斜分割填塞法を評価した。コンポジットレジン修復の辺縁封鎖性は傾斜分割填塞法により、また、水中浸漬の期間の延長に従い改善された(日歯保誌,34,1991)。 3.鋳造修復物の二次齲蝕を予防するため、フッ素ーランタン二段処理法をセメント合着前に窩壁に適用した。フッ素ーランタン二段処理法は効果的に酸の侵入を阻止し、象牙質表層の構造を維持した(日歯保誌,35,1992)。 4.象牙質の脱灰に対するフッ素ーランタン二段処理法の有効性を明確にするためSEMにて検討を加えた。脱灰前、フッ素ーランタン二段処理法を適応した象牙質面は微細な球状反応物が0.5〜1.0μmの層で覆われ、この反応物は脱灰後も残存し、象牙細管開口部もデンティナルプラグで栓塞されていた。フッ素ーランタン二段処理法を適応した象牙質はAPFや対照に比較して病巣の形成が浅かった(日歯保誌,35,1992)。 以上の実験結果より根面齲蝕の修復に用いる材料の試験には疲労試験が不可欠であり、象牙細管の走行を考慮して修復材の硬化時収縮を補償するような填塞法を適用すること、さらにはフッ素ーランタン二段処理法を適応することにより効果的に予防することが可能であることが示された。
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