研究概要 |
歯科用金銀パラジウム合金および銀合金は,鋳巣の発生を招きやすい合金であり,臨床においても鋳巣を内部に伴った鋳造体が知らずに使用される機械は多いものと思われる。また,この合金は組成的にも変色・曇りがおきやすく,さらに鋳巣が表面に現れることによって,変色・曇りを助長すると考えられる。本研究では,鋳巣の発生を招きやすい金銀パラジウム合金および合金および銀合金において,鋳造体表図層の鋳巣の存在状態と鋳造体表面の変色・曇りの発生状況との関連性を明らかにしようとするものである。 金銀パラジウム合金および銀合金を用いて板状鋳造体を作製した。鋳造体は鋳巣を多く発生させたものとできるだけ鋳巣を少なくしたものの2種類とするために,鋳造条件を変えて作製した。鋳造体は樹脂に包埋し,金属表面を研磨後鏡面状態に仕上げた。試験片は,人工唾液,0.1%硫化ナトリウム+1.0%乳酸混合液,0.9%塩化ナトリウム水溶液にそれぞれ浸漬し,1日および3日目における表面の目視による観察,光度計による表面測色および光沢の測定を行った。 浸漬3日目の金銀パラジウム合金では,鋳巣がみられる試験片にはいずれの浸漬液においても変色。曇りが認められ,特に0.1%硫化ナトリウム+1.0乳酸混合液では著しい変色が局部的にみられた。銀合金ではすべてに変色・曇りがみられたが,鋳巣の影響は明らかではなかった。浸漬前後における光沢の差には,金銀パラジウム合金で人工唾液および0.9%塩化ナトリウム水溶液の場合に鋳巣の影響が有意にみられたが,銀合金では鋳巣の影響はみられなかった。浸漬前後での色差には,金銀パラジウム合金で0.9%塩化ナトリウム水溶液に,銀合金で0.1%乳化ナトリウム+1.0%乳酸混合液に鋳巣の影響が有意にみられた。
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