研究概要 |
歯科用合金の生体適合性試験として組織培養試験はその発展が切望されるものであるが、これ迄の研究においては生体組織と合金材料の関係に重点が置かれるため、合金材料と培地の関係についての検討は甚だ少ない。本研究は、複雑な組織培養培地中における歯科用合金の電気化学的挙動を把握し、組織培養試験成績の解析に役立てようとするものである。培地構成成分として歯科用合金の電気化学的挙動を支配するのは塩素イオン、リン酸イオンであるので,これ等両イオンの低濃度領域における歯科用アマルガムおよび歯科用銀合金に及ぼす影響を検討した. 銅含有銀合金は4〜0.5mA/cm2の陽分極電流密度により0.05M塩化ナトリウム溶液中で,0.3〜0.0V(SCE)に分極され塩化銅を生成した。pH7の0.05Mリン酸塩添加は低電流密度域の陽分極電位を大にし,塩化銅生成量を減少させた。錫含有銀合金は4〜0.5mA/cm2の陽分極電流密度により,塩化ナトリウム溶液中において0.0〜-0.2V(SCE)に分極され,電流密度の高い場合は2分間の内に更に貴な電位へ飛躍した。pH7のリン酸塩添加により陽分極電位は著しく大となり,リン酸イオンの錫酸化に対する抑制効果が明らかであった。従来型アマルガムはpH7のリン酸塩溶液中において比較的不活性であり,塩素イオンが充分(0.05M)あればpHによらず塩化銀の生成することを示した.高銅型アマルガムは、リン酸塩溶液中において,0.0〜0.2V(SCE)に銅酸化体生成電流のみが著明な不活性な電位走査曲線を示し、この立上がり電位は一般にpH上昇により卑へ移行した。塩素イオンはpH4および7で塩化銀を生成させた.
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