研究概要 |
歯質,特にコラ-ゲンへの機能性モノマ-の接着機構を調べるために,NMR法を用いて,機能性モノマ-とコラ-ゲンとの相互作用について検討した. コラ-ゲンモデルとして(Pro^1ーPro^2ーGly^3)_<10>を用い,コラ-ゲン100mgを1mlのD_2O中に懸濁し,これにメタクリル酸,HEMAを所定量添加して^<13>C NMRスペクトルを測定した. 機能性モノマ-とコラ-ゲンとの相互作用の様子を詳細に検討するために,基準ピ-ク(HMDS)に対する主鎖中のt.h.ならびにr.c.に帰属されるGlyのC=Oピ-クの相対面積強度を求めた.メタクリル酸を添加した場合,その濃度が0.70mmol以上の濃度で,水溶液中からコラ-ゲンが析出するために,C=Oのピ-ク強度は急激に低下し,メタクリル酸はコラ-ゲンと強い相互作用を示すことがわかった.これは恐らく,末端NH基のNがプロトン化され,その部位にCOO^-が対イオンとして固定されたためと考えられ,この対イオン効果によりコラ-ゲンの性質が変わるために,コラ-ゲンが析出したものと考えられる.これに対し,HEMAの場合は,添加濃度が0.70mmolの時にコラ-ゲンがD_2O中に溶解するために,t.h.のピ-ク強度が急激に増加した.その後,添加量の増加に伴い,t.h.の強度が低下し,その代わりにr.c.のピ-ク強度の増加が認められる.このことよりHEMAはコラ-ゲンを膨潤・溶解することがわかる.また,HEMAの水酸基とPro^2のC=Oとの水素結合形成に伴う,高磁場側へのシフトが観測された. 以上の結果より,カルボキシル基を有するメタクリル酸とHEMAの接着機構は異なることがわかった.
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