研究概要 |
本研究の目的は,顎口腔系に以下の実験的条件御与え身体平衡機能に及ぼす影響を明確にし,身体平衡機能の測定結果が,顎口腔系機能異常者の診断・治療効果の指標となりえるものとする事である。 身体平衡機能の測定は,平衡機能計(1G06:NBC三栄),XYレコ-ダ-(8U16:NEC三栄)を用い,解析用コンピュ-タ-(PCー9800:NEC)にて分析検討した。 日本平衡神経学会の重心動揺検査の標準的な方法に準拠し,被験者群を身体平衡機能正常者群と異常者群に分類した。それぞれの群に対し1.いわゆる下顎安静位 2.中心咬合位における強い咬みしめ 3.一側に物を介在させる強い咬みしめ 4.咬合高径を挙上した強い咬みしめ 5.最大開口 6.ガム咀嚼,の6条件を開眼,閉眼でランダムに行なわせた。以上の条件で得たデ-タを,1.距離,2.面積,3標準偏差面積,の3項目で比較検討した。 その結果,身体平衡機能異常者群を被験者とするのは因難であった。また,閉眼ではバラツキが大きく,目的のための条件としては不適当であると思われる。1〜6の実験条件のうち2,3,4については,強い咬みしめを60秒間持続させるのが因難であり,一方,5最大閉口は,顎口腔系機能異常の有無に関わらず,動揺が増加する群と減少する群に分かれた。よって,2,3,4,5は目的のための条件としては不適当であると思われる。1.いわゆる下顎安静位の条件では,顎口腔機能にも関わらず動揺に差がみられなかったが,6.ガム咀嚼では,異常者群では増加し,一方正常者群では統計的に有意に減少する傾向がみられた。 以上の結果より実験条件1,6を比較することは,本研究の目的である顎口腔系機能異常者の診断・治療効果の指標となりえるものであることが示唆された。
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