研究概要 |
外側翼突筋下頭(LPt)の筋の特性を明らかにするために、当該筋の筋長(下顎位)を変えて、等尺性筋活動を筋電図的に観察した。正常有歯顎者6名につき、上下顎にレジンシ-ネを装着し、下顎を前方または側方に、中心咬合付近、最大偏心位およびその中央の位置で,等尺性最大随意力の1/2の強さで、押し出し運動をさせ、両側のLPtから筋電図を誘導し、EMGパワ--スペクトルを求めた。その結果、筋長の変化は、筋電図の周波数にほとんど影響を与えないことが分かった。これは、顎二腹筋前腹(Da)における等尺性開口時の周波数変化と同様の傾向であったことから、開口筋にのみ認められる筋電図的特徴と考えられた。 さらに、咬筋(Mm)、側頭筋後部(Tp)、Daをも加え、筋長および筋張力との関連を検討した。正常有歯顎者で、各筋につき6〜24名を選び、それぞれの筋に等尺性収縮を行わせるため、Mm,Tpについては、咬みしめを、Daでは、等尺性開口運動をさせた。筋の長さは、Mm,Tp,Daでは顎間距離を咬頭嵌合位から最大開口位までの4顎位をとらせることにより変化させた。筋の収縮力は、各筋の最大収縮とその3/4,1/2,1/4とした。各筋の等尺性収縮時のEMGを記録し、平均周波数と電位の実効値の相関および回帰直線から、各筋の特徴を検討した。その結果、筋の収縮強度を変えて得られたEMGからは、4筋ともに、筋電位が上昇すると周波数が低下する傾向が認められた。一方、筋の長さを変えて得られたデ-タからは、閉口筋群では電位の増加にともない周波数が上昇する傾向があり、開口筋群では逆の関係があることがわかった。従って、筋の収縮力の増加によるMotorUnitの発火頻度や参加特性などは、開閉口筋ともに一致した傾向があるものと考えられるが、筋の長さを変えた場合には、それらは両筋で異なり、EMGパワ-スペクトルの周波数ー電位の面からも、外側翼突筋下頭の開口筋としての特徴が一層明かとなった。
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