研究概要 |
本研究課題より得られた研究成果を次の3点に要約する。 シェ-グレン症候群患者のX線唾影像は、導管系分枝パタ-ンのフラクタル次元が低下する。正常患者のフラクタル次元1.64に対して、シェ-グレン症患者のフラクタル次元は1.39に低下する。これは、同症患者の唾影像の導管系分枝パタ-ンの単純化を対応している。従来、シェ-グレン症候群の鑑別診断基準として、唾影像における点状陰影像が採用されている。本研究から、導管系パタ-ンの変化は本症の早期に、点状陰影像の出現に先行して認められることから、同パタ-ンのフラクタル次元は、シェ-グレン症の病態進行の指標として有効と期待できる。 シェ-グレン症モデルのマウス系統NZB/WF_1の唾影像所見と病理組織学的検索により、耳下腺実質の変化は本症の病理学的鑑別基準である、リンパ球の導管周辺部への浸潤(Focus形成)に先行することを確認した。 唾影像導管系分枝パタ-ンなどの樹状形態のフラクタル次元を理論的に考察した。幹長、分枝角度、分枝比、分枝数のパラメ-タ-を与えてコンピュ-タ-グラフィックスにより作図した、二分枝で構成する樹状パタ-ンのフラクタル次元を解析した結果、フラクタル次元の値を左右する因子が明らかとなった。すなわち、分枝単位のサイズ、分枝単位の分枝点一幹間の荷重,分枝角度,分枝比,分枝単位間の干渉,分枝単位の数,次数の異なる分子単位間の干渉,荷重など多様な因子が複雑にフラクタル次元の数値を左右する。さらに、これらの因子は測定に用いる、“物指し"のスケ-ルに左右される。一般に,現実の形状のフラクタル次元は測定系に依存しない不変量ではなく,“物指し"のスケ-ルにより、0から2の間の値をとることが認識できた。したがって、フラクタル次元の数値を呈示する場合には,“物指し"のスケ-ルを附記することが必須となる。
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