研究概要 |
歯原性嚢胞の組織発生をあきらかにする目的で、嚢胞上皮の細胞分化、増殖、免疫機構への関与、に関して免疫組織化学および、in situ hybridizationを用いて検討した。各種のサイトケラチン(Nos.1,2,3,4,7,8,10,11,12,13,18,19)、Filaggrin、Involucrin(Inv.)、EGF、EGFレセプタ(EGF-r)、TGF-α、c-erbB-2、IL-1α、IL6の発現につき検討した。未固定凍結切片およびホルマリン固定パラフィン切片を作成し、上記各種抗体につきABC法にて染色を行った。分化に関して、含歯性嚢胞と非角化性原始性嚢胞は、口腔粘膜では基底層にのみ発現するNo.19が全層に発現し、更に口腔粘膜には発現しないNos.8,18も強く発現しておりsimple epitheliaに近い性格を示した。また、Inv.が陰性であるにも関わらず、口腔粘膜の角化層に発現するNos.1,3,10,12が上層に発現しており、含歯性嚢胞と非角化性原始性嚢胞の嚢胞上皮は独特の終末分化過程をとっていることが示唆された。歯原性角化嚢胞では、Inv.,Nos.1,3,10,12陽性であり、口腔粘膜の角化と同様のパターンを示すが、含歯性嚢胞と同様にsimple epitheliaのマーカーにも同時に発現しており、これは由来が歯原性である上皮に共通の性格であるのかもしれない。歯根嚢胞は炎症の修飾が大きいためか、一定の発現パターンが得られなかった。次に、増殖因子では、各嚢胞ともEGFの発現を認めない一方、主に基底細胞にTGF-αとEGF-rの発現を認め、TGF-αによる上皮増殖機構が考えられた。IL-1αについては、正常上皮では角化層を除く全てのケラチノサイトにその存在が認められたが、IL-6は正常上皮では陰性であった。顎骨嚢胞では基本的には嚢胞の種類を問わず正常上皮と同じパターンであった。IL-1α、IL-6、EGF-r、TGF-αに関してin situ hybridizationによるmRNAの発現を検索したが全て陰性であった。
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