研究概要 |
唾液腺疾患における単純X線写真の意味や唾影像に含まれる情報の診断学的意義について検討した。対象は1978.4.〜1989.12.の間に大阪歯科大学附属病院歯科放射線科を受診し,唾石症と診断された449症例のうち,X線写真の整った顎下腺442症例(耳下腺:7症例)について集計観察を行った。 1.性差は男性:女性=222:220症例とほぼ同数を示し,平均年齢40.2歳で男女による差異および発現部位の左右差もみられなかった。 2.唾石症の特徴的症状とされている唾腫や唾仙痛を伴ったものは242症例(54.8%)にみられた。無症状でX線写真検査により偶然発見されたもの79症例(17.9%)であった。 3.唾液腺造影検査を行った122症例について唾影像を中心に検討した。 (1)唾液腺造影検査は唾石の位置や唾液腺組織の状態など術式の決定に際して,何らかの点で96症例(78.7%)が有効と判断された。 (2)唾影像の導管系と腺系に分けてその描出の状態により,A,B,Cの型に分類した。3型のなかで最も変化の少ないA型のなかの15症例について,腺体内分枝の形態的複雑性をフラクタル次元を用いて計測した。フラクタル次元は正常者群:1.30,唾石症症例:1.22で両者の間に有意な差がみられ,客観的評価の指標として有効であることが示唆された。 まとめ:唾影像の読影においては,微細な変化の判断に苦慮する場合が生じる。そこで唾影像の微細な変化の評価を客観的に行うためにフラクタル次元を使用できる可能性が本研究で示唆された。また,唾影像を画像処理し,細線化を行いフラクタル次元の計測の高速化と自動化の検討を試みている。今後はこれらの数値を用いた唾液腺造影検査診断の自動化および診断支援システムの構築ができるような方向に進めていきたいと考えている。
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