研究概要 |
細胞は生体において、空気からは表皮あるいは粘膜で保護され,固有の圧力とガス環境に存在している。一方in vitroの培養細胞は,直ちに環境の選択を受け、圧およびガス等に適応したもののみが生着・増殖すると考えられた。この考え方は常温(37.0℃)における30mmHg加圧実験下ではプラスチック皿での核酸合成能、蛋白合成能に有意の差を示さなかった結果による。しかし培養温度条件を34.5℃,35.5℃に設定し、同様の加圧条件を与えると、以下の結果が得られた。なお本実験にはラット胎児由来のケラチノサイトが用いられた。34.5℃では対照群の細胞増殖はほぼ正常のパタ-ンを示したが、加圧群ではほとんど増殖を示さないばかりか、培養四への付着能力が著しく阻害されていた。一方35.5℃においては対照群は培養2日目でGI期58.0%,S期25.0%,G_2+M期17.0%に分布し、培養4日目でGI期78.4%,S期13.9%,G_2+M期7.6%であった。加圧群は培養2日目でGI期54.1%,S期26.0%,G_2+M期19.9%であり、同4日目にはGI期80.0%,S期11.3%,G_2+M期8.7%となり,S期に分布する細胞の割合が減少していることが明らかとなった。またKB細胞を用いた実験では、細胞が増殖する接触面の性格にも影響されることが明らかになった。すなわち厚さ2.0mmのコラ-ゲン・マトリックス上で培養された細胞は、対照のプラスチックシャ-レ上における増殖率(4日目)に比して、58%に減少し、さらに30mmHgの加圧条件では、さらに35.0%に抑制されていた。これらの事実より、細胞は組織の構成単位として、圧を刺激あるいは情報として感知することが明らかとなり、その伝達系には温度感受性の存在する可能性と周囲組織の粘弾性が効果を与える可能性の存在することを示唆した。また今回、グスの環境の効果、すなわち5%、20%のそれぞれの酵素分圧では、圧の効果を明らかにすることが出来なかった。
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