| 研究概要 |
永久歯エナメル質に種々の濃度のフッ化ナトリウム溶液(50,100,500,1000ppmF^ー)を作用させ、F^ーの取り込みとCO_3^<2ー>の挙動を解析した。さらに、予め放射線照射によって、CO_3^<2ー>をCO_3^<3ー>ラジカルとしたエナメル質のF^ーの取り込みと、それに伴うCO_3^<3ー>ラジカルの挙動をESRによる信号強度として計測した。
永久歯エナメル質中のCO_3^<2ー>濃度はF^ー作用前で3.48%、作用1か月後で50ppmF^ーが2.93%、100ppmF^ーが2.91%、500ppmF^ーが3.35%、1000ppmF^ーが3.33%であった。F^ー作用前に対するCO_3^<2ー>の減少率は、50,100ppmF^ーで15.8〜16.4%、500,1000ppmF^ーで3.7〜4.3%となり、F^ー濃度の違いによりCO_3^<2ー>の減少率に約4倍の差が認められた。一方、F^ーの取り込み量は、CO_3^<2ー>の減少率が少ない500,1000ppmF^ー作用群で2000〜2300ppm、50,100ppmF^ー作用群で800〜950ppmとなった。また、酢酸緩衝液(pH4.0)によるエナメル質の溶出量は、100ppmF^ー作用群が最も少なく、耐酸性に優れ、F^ーの作用濃度と耐酸性の間に一致性は認められなかった。エナメル質に ^<60>Coγ線を照射すると、照射量に対しCO_3^<3ー>ラジカルの信号強度は対数的増加を示した。ヒト永久歯エナメル質では、約5×10^6Rの照射でほぼ最高値を示し、ラジカル強度は飽和状態に達した。F^ーの取り込みに伴うCO_3^<3ー>の信号強度は、ラジカル化率1.2%(10^4Rγ線照射)と100%(10^7R)のいずれも有意(p<0.01)に減少し、F^ーの取り込みに伴うCO_3^<2ー>の変動が示唆された。
エナメル質中のCO_3^<2ー>/F^ーは、約454.6からF^ーの取り込みで急激に減少し、100ppmF^ーを1か月作用させると1/15の約30.7となった。このCO_3^<2ー>/F^ー曲線は、フッ化物応用時の時期および期間を決定する手がかりになるものと考えられる。
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