研究概要 |
成長発育時に口腔内の顕著な変化として,乳歯から永久歯への交換が挙げられる。この交換の状況により将来の永久歯列が決定されると考えられる。その結果として,咀嚼能率および発音能力において適切な発育が保障されると考えられる。そこで,小児歯科領域において限定したならば乳歯の形成,萠出,吸収そして,永久歯の萠出というそれぞれの過程についての研究が急務とされてきた。我々は,ヒト乳歯歯根膜由来培養線維芽細胞(HPLFーY)とヒト永久歯歯根膜由来培養線維芽細胞(HPLF)の培養系への導入を試み,得られた細胞のcharacterizationを行い,HPLFーY,HPーLFの細胞の性質の違いを明らかにすることが,乳歯から永久歯へ移行していく過程を解明する上で非常に重要であると考えられた。 本研究においてHPLFーY,HPLFを初代培養,継代培養を行った。次に,間葉系結合組織を主体とする歯胚の基質形成には,growth factorの一つであるアスユルビン酸の関与が必要であることからLーAscorbic acid(AsA),LーAscorbic acidー2ーPhosphato(AsAーP)のHPLFーY,HPLFに対する効果について調べたところ,各々の細胞において、細胞の性質に相異が確認できたことは,歯ならびに歯周組織の形成と発育を知る上で非常に重要であると考えられた。さらに,HPLFーY由来の細胞成長因子および調節因子の存在とHPLFY,HPLFに対する細胞増殖および分化の機構について定量的に解析できたことは、HPLFーY,HPLFの培養系の確立が重要な役割をになっているものと考えられた。 以上の事から、今後、乳歯から永久歯への移行という現象をとらえる上で、乳歯および永久歯の歯周組織、中でも歯根膜由来の培養線維芽細胞の培養系を用い,その応答(メカノサイトロジ-)を研究することによって乳歯歯根の吸収のメカニズムを知る一助となることを期待するものである。
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