研究概要 |
充分大きな面積を持ち,互いに極めて近接した二つの電極(マクロ電極)の間に,微少な電極(マイクロ電極またはミクロ電極)が位置するように作製した複合電極においては,マクロ電極へ適当な電位を印加することによって,ミクロ電極表面の溶液環境が制御し得るという予測に基づいて研究を行い,以下の結果を得た. 1.複合電極の製作:約75μm離れて平行に存在する二枚のグラッシ-カ-ボン板(マクロ電極;表面積0.08cm^2)の間に,直径25μmの白金線(ミクロ電極)が位置するような複合電極を約30本試作した.これらの内,ミクローマクロ電極間の距離が25μm以下である電極のみが,次項で述べるような,上記予測に適合する電気化学的特性を示すことが明かとなった. 2.複合電極の電気化学的特性:Fe^<2+>を含む水溶液中,マクロ電極の電位をFe^<2+>の酸化電位よりも十分正の値に保った条件下でのミクロ電極によるボルタムメトリ-でにおいては,Fe^<2+>のFe^<3+>への酸化波はほとんど現れず,Fe^<3+>の還元波が主として観測された.このことは,ミクロ電極がマクロ電極の拡散層内にほぼ位置しており,作製した複合電極が研究目的にかなったものであることを示している. 3.アスコルビン酸(AA)共存下でのド-パミン(DA)の定量:作製した複合電極を通常の方法で研磨したのみの場合,マクロ電極に+0.40V(vs.SCE)の電位を印加することにより,AAとDAの酸化電位の差が僅か100mV以下であるにもかゝわらず,ミクロ電極表面からAAがほぼ選択的に除去された.この条件下でミクロ電極による微分パルスボルタムメトリ-を行うことにより,10mMのAA共存下0.5mM以上のDAの定量が可能であった.さらに,マクロ電極の表面に電気化学的酸化処理を施すことにより,AAーDA系における複合電極の選択性が向上することが示された.即ち,処理後の電極においては,マクロ電極に+0.1Vの電位を印加するのみで,20mMのAA共存下0.2mM以上のDAの定量が可能となった.
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