研究概要 |
camlの条件致死変異株を作製するために、caml遺伝子のCa^<2+>ー結合部位に部位特異的変異を導入した。これら変異株はcamlーT64,cam1F102,cam1ーT137,cam1ー(T64,F102)及びcaml(F102,ーT137)である。これらのうちcamlーT64,cam1F102,cam1ーT137の変異株は増殖能、接合能、胞子形成能において野生株と比べて形態的な相違はなく、またcamlー(T64,F102)変異株は致死であった。一方、camlー(F102,T137)変異株は温度感受性(ts)の形質を示した。このts変異株(cam1^<ts>)の非許容温度条件における最終表現型は一つの決まった形態を示さない。50%の細胞は一核で停止し、35%の細胞は細胞が分離しないか、核が分離せずに非対称にセプタムを形成した。また15%の細胞では2核で停止するか、あるいは染色体が分離した。このことは分裂酵母の細胞周期においてCaMによる制御が複数あることを示唆する。一方、caml^<ts>変異をホモにもつ二倍体株は許容温度条件でも減数分裂の過行が阻害されていることから、CaMが分裂酵母の胞子形成のみならず、減数分裂をも制御する多機能性タンパク質であることが示された。分裂酵母におけるカルモデュリンの細胞内分布を抗カルモデュリン抗体を用いて調べた。野生株においてcaml^+遺伝子産物は細胞周期を通して細胞質にあるが、サイトキネシスにおいてカルモデュリンはFーアクチンと同様に、既に知られているセプタム形成時のパタ-ンと極めて似た局在を示した。このカルモデュリンの局在パタ-ンは制限温度条件で細胞壁物質が規則的に蓄積せず、細胞が2ー4核となって膨らみ、伸長して停止するcdc3変異株では明らかに消失していた。これらの結果からS.pombeの細胞周期制御におけるカルモデュリンの一つの機能がサイトキネシスすなわちセプタム形成と細胞分離にあることが強く示唆される。
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