研究概要 |
既に我々は、生体内アミンであるフェネチルアミンが脳内で閉環し、テトラヒドロイソキノリン骨格を形成することを明らかにし、更にこの閉環体が神経変性疾患として代表的なパ-キンソン病の発症防御機構と密接なかかわりを有していることを示してきた。 本研究においてフェネチルアミン骨格を有している他の化合物、すなわち覚せい剤であるアンフェタミン・メタアンフェタミン、幻覚剤MDMA等をとりあげ生体内閉環反応を検討したところ、アルコ-ル慢性中毒ラットに覚せい剤を投与すると、生体内閉環体である1,3ジメチルーTIQ生成が認められた。またMDMAは覚せい剤と比較して閉環反応を容易に起こしテトラヒドロソキノリン(TIQ)誘導体を生成した。これらの結果からフェネチルアミン骨格を有する化合物群は一般に生体内で縮合閉環し、テトラヒドロイソキノリン(TIQ)骨格を生成することが明らかとなった。 次にこれら閉環体の生理作用について検討を加えた。1,3ジメチルーTIQ生成に伴ないラットは行動異常を起こした。血中、脳中の1,3ジメチルーTIQ量と行動異常の出現に正の強い相間関があることから、覚せい剤と慢性エタノ-ル振取により脳内で1,3ジメチルーTIQが生成し、それが行動異常を引起こしていると示唆される。1,3ジメチルーTIQを別途化学合成しラットに投与しても同様の行動異常が出現し、脳内アミンのうち特にセロトニン糸の変動が顕著であった。 MDMAの閉環体をラットに投与した場合も行動薬理的にMDMA投与時とは明らかに異なり自発的運動量の低下をきたした。 覚せい剤,MDMAは母化合物自身が脳内から消失しても毒性が残存することが知られており、今回の結果は生体内閉環反応成績体が本毒性の一部を荷っていることを示唆していると考えられ大変興味深い。
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