研究概要 |
び慢性被角血管腫を伴った新しいリソゾ-ム代謝異常症患者を、一日本人女性に見出した。本患者尿中には多量の、Oーグリコシド結合型糖タンパクに由来するアミノ酸ーOーグリコシドが排出されていた。それら主要オリゴ糖鎖構造を、NMR,FAB/MS分析等で決定することができた。各種グリコシダ-ゼ活性を測定したところ、本患者の生化学的原因は、αーNーアセチルガラクトサミニダ-ゼ(αーGalNAc'ase)の欠損であることが判明した。Dr.Desnickとの共同研究の結果,本酵素を支配している遺伝子の一部がC→Tに点変異を起こしていることを証明することができた。 神崎病とは異なり、Nーグリコシド結合型糖タンパク糖鎖を大量に排出する患者を見出した。主要シアロオリゴペプチドの化学構造を解析した結果、この患者はアスパルチルグリコシラミン尿症であり、Lーアスパラチルグリコシラミンアミドヒドラ-ゼ酵素の欠損であることが判明した。 上記、両患者共に、尿中のシアロ糖ペプチドの存在が、臨床診断上,重要であった。PAD検出器を備えたHPLCによる分析システムを開発することにより、わずか数μlの尿により、蓄積物質の同定が可能となった。 代謝異常症は、特定の糖鎖や糖タンパクの機能を知る上で重要な情報を与えて呉れる。特に「神崎病」はOーグリコシド結合型糖タンパク代謝の異常症として世界で最初の例であった。私達の発見と時を同じくして、同一酵素の欠損でありながら、中枢神経系に重大な障害を伴い,被角血管腫は見られないなど、神崎病とは全く異なる臨床像を示す症例がSchindlerによる報告された。今後、両患者の違いを分子遺伝子レベルで解析することにより、Oーグリコシド型糖鎖の代謝と意義が明らかになるものと期待される。
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